※この記事は「その理由、ちゃんと説明します」シリーズvol.3としてお届けしています。
時々、こんなご相談をいただきます。
「クラトームさんの“男性向けの技”って、少しだけでも教えてもらえませんか?」
特に多いのは女性の方──
セラピストやリラクゼーション関係の方、風俗系のお仕事をされている方などから、
「お客様の反応が良くなるような技を取り入れたい」という目的で尋ねられることがあります。
また過去には、お客様から
「パートナーが男性機能の衰えを感じていて…少しだけ教えてもらえないか」というご相談をいただいたこともありました。
クラトームでは、お教えしていません
これは、「企業秘密だから」でもなければ、
「競合を増やしたくない」という理由だけではありません。
正直に言えば──
そういった気持ちが全くないとは言いません。
でも、それ以上に、もっと大きな理由があります。
カルサイネイザンは繊細で難しい技術です
タイ式マッサージやアロマのように、危険性のある技や部位を外して、初心者でも習得できるように、ある程度“型”としても再現できるものとは違い、
カルサイネイザンは、お腹や臀部、生殖器のまわりという、極めてデリケートな部位を扱う技術です。
私も実際に施術をしながら、何度もお客様の動きやお身体の変化を確かめながら施術をしますが、それでも、「気持ちよくない」「痛い」などとおっしゃられて、自分のやり方がまずかったのか、とヒヤッとする場面に遭遇することもあります。
ちょっとした痛さや違和感が、お客様の精神的・身体的なトラウマを呼び起こすリスクすらある。
だからこそ、「ちょっとだけでも」「一部だけでも」というかたちで
“触りだけ”を教えることは、もし何か健康被害が起こったら・・・と考えると本当に怖いです。
一応、教えられる立場にはあります。でも──

私は2010年にチェンマイでカルサイネイザンを学び、その後2017年に同じスクールでティーチャー課程を修了しました。確かに「教えることができる立場」ではあります。
ただ正直に言えば、そのティーチャー課程も数ヶ月かけて習得するようなものではなく、数日で修了できる程度の簡単な内容でした。「教える技術」や「安全管理」「学科試験」、もちろん日本の法律上の問題点や留意点に触れることもなく、カリキュラムは基本的に「技術さえ覚えればOK」という形式。つまり「教えてもいい」と言われただけで、「きちんと教える力を備えた」というわけではないのです。
現地で実技を学びながらも語学の壁はありました。マンツーマンの指導の中で、できるだけ多く質問をしたり、答えをいただいたり、ヒントを得られるよう努めていましたが、先生との意思疎通はやはり完璧とは言えません。あとから復習を重ねたり、他の技術や生理学・解剖学の知識と照らし合わせて「あれはこういう意味だったのか」と気づくことも、今なおあります。

何より、私の先生はカルサイネイザンの創始者マンタク・チア氏のタオ・ガーデンでアシスタントマネジャーを務めていた方で、タオイズムなどにも深い造詣をお持ちです。自分とは比べ物になりません。
基礎知識や実技経験なしでは成り立ちません
カルサイネイザンは、チネイザン(内臓の施術)の応用・発展として位置づけられています。
チネイザンは気の巡りを重視している施術で、自分も完全にそれを理解しているなどと畏れ多くて申し上げられませんが、少なくともそこを飛ばして「気持ちよくするコツ」だけを知ろうとする姿勢は、これも私としては危険に感じます。
少なくとも、お客様に対する基本的な指圧などの技や生理学や解剖学の知識、私が学んでいたワットポーで言っても、基礎+アドバンス(合計15日間90時間、できればプロレベル1の30日165時間)と数百時間の実技経験がある程度あるくらいでないと、受講しても自分の技には出来ないのではないかと思います。
形だけ真似すれば逆効果になることも
たしかに、カルサイネイザンを受けた方から
「機能が戻った」「心が軽くなった」「自信がついた」といった声をいただくことはあります。
でもそれは、関係性と信頼を築いた上で、構成された施術だからこそ生まれた反応です。
形だけを真似て、なんとなく触れてしまった結果──
心や身体に不可逆的なダメージを与えてしまうことも、十分あり得ると私は思っています。
もし本気で学びたいなら
もし「施術者として本格的に技術を学びたい」とお考えであれば、
私は、タイ現地で基礎からしっかり学ばれることをおすすめしています。
日本でも、教えてくださる方はきっといらっしゃると思います。タイ式の基礎であれば、語学力や渡航費・滞在費を鑑みて、そのような形で学ぶのもありかもしれません。
ただ、特にカルサイネイザンのような技術に関しては、現地の文化・背景・技術により深く根ざした先生方のもとで学ぶ方が、より安全で誤解のない理解に繋がると考えています。
だから、クラトームではお教えしていません

これは、“閉じた姿勢”ではありません。
「安全に、正確に、そしてより深く学べる方法があるなら、そちらを選んでほしい」──
そう思っているからこそ、私は“ちょっとだけ”“軽く”といったご要望にはお応えしていないのです。
そして同時に、カルサイネイザンという技術が、単なる“気持ちよさ”や“技術のひとつ”に矮小化されないことを、私は願っています。
繊細な技だからこそ──確かな理解・技術、そして、お客様との信頼が大切」

どんなに技術を磨いても、
それが「相手の安心や信頼」を崩してしまっては意味がありません。
クラトームでは、技術をそれっぽい形としてではなく、十分な知識や危険性なども把握した上で、“信頼の中で使うもの”として考えています。
どうかご理解いただけますと幸いです。