はじめに
お客様に「満足してリラックスして帰っていただく」。
このシリーズでは、そのためにセラピストがどんなことを考え、どんな準備をしているのかをお話ししています。
今回のテーマ「主訴の確認と施術プランの組み立て」は、その中でも最も“核”となる部分です。
1|主訴の確認
クラトームでは、必ず「お疲れ具合」を伺う理由
クラトームでは、施術に入る前に必ずお客様の「お疲れ具合」を確認しています。
(※メンズワーク120分以下のコースを除く。ボディワークが含まれないためです。)
一見すると当たり前のように思えるこの確認ですが、実は非常に重要で、施術全体の質を左右します。
なぜなら――お客様が「疲れていると感じている箇所」と、実際に身体が「疲れのサインを出している箇所」は、必ずしも一致しないからです。
「凝っているところを中心に」だけでは伝わらない
「凝っている部分を中心にお願いします」と言われることがあります。
もちろん、これまで6,800人以上の施術経験の中で、身体の状態を見れば疲労が出ている箇所を判断することはできます。
ですが、その判断だけに頼ると、本当の満足にはつながりません。
自分自身、マッサージを受けるのが好きで、勉強も兼ねて他店に行くことがあります。
立ち仕事なので、本当は太ももの裏や臀部、腰まわりを重点的にほぐしてもらいたいのですが、
「首や肩が凝ってますね」と言われ、そちらを中心に進められることが多い。
ときには施術時間の半分が首と肩で終わりそうになったこともあります。
そのたびに感じるのは、“感じている疲れ”と“実際の疲れ”の違いです。
そしてこのズレをすり合わせることこそが、施術前の「主訴の確認」の本質だと考えています。
2|具体的な施術プラン ― タイボディワークの場合

ワットポースタイル
クラトームで行っているタイボディワークは、ワットポースタイルをベースにしています。
タイ古式には大きく分けて「ワットポースタイル(バンコク式)」と「チェンマイスタイル(北タイ式)」があるといわれています(諸説あり)。
- ワットポースタイル(王宮式):指圧や手圧を中心にした、リズムと流れを重視するスタイル
- チェンマイスタイル(北タイ式):ストレッチや肘を使うダイナミックな技が多いスタイル
クラトームがワットポースタイルを軸にしているのは、筋肉の深部に丁寧にアプローチしながらも、安全で安定した施術ができるからです。
ワットポースタイルの基本構成(5ステップ)
ワットポースタイルには、基礎として「5つのステップ」があります。
これはタイのワットポータイマッサージスクールで学ぶ初級コース(5日間)でも最初に習得する流れです。
- 仰向け(両脚の前面・腕中心)
- 横向き(両脚の側面・内側・背中・首・頭部 ※左右あり)
- うつ伏せ(脚の裏側・背中・腕)
- ストレッチ(脚中心)
- 座位(首・肩まわり)
一見シンプルに見えるこの5ステップですが、実は非常に計算されており、奥が深い。
タイ式を学び続けるほどに、「この順番には理由がある」と実感します。
基礎5ステップが優れている理由
長年の施術と学びの中で感じるのは、この基本構成が初心者にも安全で、お客様にも心地よいということです。
- 難しい生理解剖の知識がなくても、自然な流れで身体を整えられる
- 危険な角度・過度な力を使う技が除かれており、安全性が高い
- セラピストが過剰な力を使わなくても、圧とリズムで深部まで届く
- ステップの順番が「セン(身体のエナジーライン)」理論に沿っており、全身の巡りを整えるよう構成されている
この5ステップをしっかり踏むだけでも、全身の流れが整い、施術後の体感はまったく変わります。
だからこそクラトームでは、時間が許す限りこの流れをベースにしています。
時間が限られるとき、どうプランを組み立てるか
5つのステップをすべて行うと、おおよそ2時間15分ほどかかります。
クラトームでは、タイボディワークの150分以上、またはメンズビターの210分以上のコースであれば、
この全ステップを通しで行いながら、お客様の主訴に合わせてアレンジを加えています。
具体的には、タイ式プロフェッショナルレベル2で学んだ
「特定の疲労部位に対するツボ押し」や「専門技」を、要所に組み込んでいく形です。
(この“特化技”については次回詳しく触れます。)
時間が短いときの考え方
とはいえ、実際のご予約の多くはボディワーク90〜120分、またはメンズビター150分〜180分です。
この時間内で、5ステップすべてを丁寧に行い、さらに主訴に特化した技法を追加するのは現実的ではありません。
ここで大切になるのが、お客様の主訴に沿った組み立てのために、必要な流れは何かという発想です。
時間をただ短くするのではなく、施術の“構造”を再設計する感覚です。
これについても、次回詳しく触れます。
3|具体的な施術プラン ― アロマボディワークの場合
リラックス重視
クラトームのアロマボディワークはタイ式をベースにしているため、
指圧・手圧・ストレッチといったタイ式のアプローチか、
ストローク(エフラージュ)や指でなぞるペトリサージュなどオイル特有のアプローチの違いはあれ、
基本的なコンセプトはタイボディワークと同じです。
ただし、アロマボディワークの主な目的は、筋肉や関節に部分的にアプローチすることではなく、全身の流れやアロマの香りの中でリラックスしていただくことにあります。
タイボディワークが“構造的な再設計”だとすれば、
アロマボディワークは“感覚的な再調律”といえます。
そのため、大きな施術の流れは体全体の回りやリラックスを重視したものに統一し、
お客様の主訴に応じてその部位に時間をかけたり、
必要に応じて特化技を少し加える形で進めています。
まとめ:主訴に合わせた施術の組み立て
お身体の状態などを確認します
クラトームのボディワーク施術の特徴は、お客様の主訴に沿った柔軟なカスタマイズにあります。
- タイボディワークは“構造的な再設計”。
お客様の主訴に対し、ワットポー式タイ式プロレベル2の理論に基づいた施術構成・技で、お客様の反応を確認しながら進めます。- アロマボディワークは“感覚的な再調律”。
リラックスできる香り、流れ、タッチを大事にしつつ、主訴に応じて時間や技を調整します。- どちらの場合も、長年の経験と学びに基づき、安全かつ効果的に、限られた時間の中で最適な形に仕上げています。
お客様ごとに違う体の状態や感覚に合わせるからこそ、単なるマニュアル通りではなく、施術者の判断と技術が活きる時間になるのです。
次回予告
次回「Vol.3(後編)」では、今回あえて省いた**「タイボディワークの施術の組み立て」**について詳しくお話しします。
全体の流れの中でどこをどうアレンジしているのか、そして時間が限られる中でどう主訴に対応していくのか──
より実践的な内容になります。どうぞお楽しみに。(近日公開予定)