はじめに
お客様に「満足してリラックスして帰っていただく」。
このシリーズでは、そのためにセラピストがどんなことを考え、どんな準備をしているのかをお話ししています。
今回のテーマ「主訴の確認と施術プランの組み立て」は、その中でも最も“核”となる部分です。
後編では、特にお客様の主訴によって施術内容が大きく変わる、「タイボディワーク」の組み立ての秘密を少しだけご紹介します。
4|前編のふり返り:時間と構成の再設計という考え方
前編では、ワットポースタイルの基本5ステップをベースに、
お客様の主訴に合わせて施術をどう組み立てるかについてお話ししました。
5ステップすべてを丁寧に行うと、2時間15分ほど。
クラトームでは、タイボディワークの150分以上(またはメンズビター210分以上)のコースでは
全ステップを通しで行いながら、お客様の主訴に合わせてアレンジを加えています。
具体的には、タイ式プロフェッショナルレベル2で学んだ
「特定の疲労部位へのツボ押し」や「専門技」を要所に組み込んでいく形です。
こうして、お客様ごとに最適な流れを“再設計”していく考え方を中心にお話ししました。
5|カスタマイズの鍵は「ワットポー式プロレベル2」
この“再設計”を行う際に活きるのが、
ワットポースタイルのプロフェッショナルレベル2で学んだ知識です。
全身のセン(エナジーライン)の理論に基づき、
お客様の主訴に最も効果的な経路を選び、
“抜け感のない施術”として成立させることができます。
クラトームでは、この理論をもとに、
お客様ごとに施術をフルカスタマイズしながら、
限られた時間の中でも、最も満足度の高い形を組み立てています。
ワットポー式プロレベル2で学んだ特化技
僕がプロフェッショナルレベル2で学んだのは、
単なる“ストレッチの応用”ではなく、症状別の改善アプローチです。
対象となる症状は多岐にわたります。
・頭痛 ・偏頭痛 ・寝違え ・首の捻挫 ・ベル麻痺
・肩こり(急性・慢性・呼吸困難併発)
・四十肩・五十肩(後方・前方)
・テニス肘 ・手根管症候群 ・手指関節炎
・腰痛(3種) ・膝関節炎 ・足首の捻挫・腫れ
・足指関節炎 ・アキレス腱炎 など
症状に合わせた3ステップ
それぞれの症状に対して、実際の授業では次の流れで進めていきます。
- 症状確認
この技で改善可能な症状かどうかを確認。- 施術
症状ごとに決められた「基本ステップ+応用技」を組み合わせて実施。- 改善確認
可動域や痛みの変化を見て、調整。
たとえばお客様が「ベル麻痺」とおっしゃった場合、
実際に動かしてもらい、「この動きは痛いですか?感じますか?」と確認。
そのうえで、ベル麻痺に有効とされる基本5ステップのうち、○と○を組み合わせ、
途中に専門技を差し込みながら構成していきます。
実は昔「タイ式レベル2」というメニューがあった
2010年にレベル2を修了した当初、
僕はこの症状確認から入る形で「タイ式レベル2」というメニューを実施していました。
しかし、実際に施術してみると──
「リラックスしに来たのに、確認ばかりされるのは違う」
という感覚に気づいたんです。
そこで今は、施術中にお客様の反応を見ながら自然に確認しています。
つまり、リラックスを邪魔しない“静かな評価”に切り替えたわけです。
「ベル麻痺」なんて言う人、本当にいるの?
そう思われますよね(笑)
たしかに多くのお客様の主訴は「肩こり」「腰痛」「脚の疲れ」などが中心。
でも、長年やっていると、まれに「手根管症候群」や「ベル麻痺」といった、具体的な症状を訴えられる方もいます。
とはいえ、クラトームの基本設計はあくまで「肩こり」と「腰痛」または「脚の疲れ」に特化した構成。これらの疲労にしっかり対応できるよう、90分・120分で最適なバランスを組み立てています。
四十肩・五十肩への“予防的アプローチ”
意外と多いのが、40代以降の「四十肩・五十肩」。
実はこの症状には、予防的に有効とされる技があるんです。
クラトームでは、通常の肩まわりケアの中にも、
その技を自然に組み込むようにしています。
また、実際に四十肩・五十肩でお悩みの方には、
「すごく痛いけど、やってみます?」
と確認したうえで、ワットポー式で学んだ特化技を適用することもあります。(本当に痛そうなので、それでもよければ、ですが…)
膝や肘の場合は…(裏話)
たまに「膝が痛い」「肘が重い」といった主訴の方も。
そんな時は──
お客様がシャワーを浴びている間に、こっそりテキストを開いて復習してます(笑)
十数年前のノートですが、まだまだ現役です。
まとめ:理論を現場で活かすということ
ワットポー式プロレベル2で学んだ理論や技術は、あくまで施術の“設計図”です。
実際の現場では、お客様の体調・体格・その日の状態によって、
その通りに進めることはほとんどありません。
クラトームでは、この理論をベースにしつつも、
お客様一人ひとりの反応を見ながら、最適な流れに変えていくことを大切にしています。
だからこそ、同じ「肩こり」でも、同じ「腰痛」でも、
お客様のお身体の状態や反応によって組み立て方は違ってくるのです。
理論を知った上で、あえて崩す。
その積み重ねが、クラトームのボディワークを支えています。


